分岐点 (後編)
大きな音をたてて、扉が開けられた。同時に怒鳴り声が響いた。
「瑞樹ーっ!」
胸に安堵が広がる。
坂木さんは啓一の存在を気にとめず、素早くもう一度棒キレを振りかざした。
啓一もさらに素早く反応し、床に丸まっている私に覆い被さった。
直後、啓一の体越しに衝撃が伝わってきた。啓一が小さな呻き声をもらす。
「啓一、啓一っ!お願い、私よりも竜輝を!!早く!!」
啓一の体の下からそう叫んだ。
「もう大丈夫だ…。」
啓一の小さな声が聞こえた。
それと同時に、ドカドカと大柄の男二人が部屋に踏み込んできた。
「坂木雅子、おとなしくするんだ!」
私と彼女は、突然の出来事に呆然とした。
「これは…。」
「お前が入院させられた時、おかしいと思って刑事さん達に調べてもらっていたんだ。」
よく見ると、部屋に入ってきた男二人は、あの刑事二人だった。
「奥さん、よく頑張りましたね。」
あの、加藤刑事のかすれ声。
「あぁ…。」
優しい声に、体の力が抜ける。
それは彼女も同じだった。全身の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ。
一瞬の安堵を感じた時だった。