分岐点 (後編)
―…竜輝、竜輝は…?
振り返ると、さっきと同じように、押入れから白い手が見えている。
―待ってね、竜輝…
重い体を起こし、その手に触れようとにじり寄る。
その瞬間、髪の毛を鷲づかみされ、後ろに引き倒された。
「…あぁっ!!!」
この異常な状況が非現実過ぎて、展開に素早く対応できないでいた。
「雅也のためなら何でもするわ。」
豆電球に照らされて、坂木さんの顔だけが浮かんでいるように見える。
そして、ニヤリと笑い、手にしていた棒を大きく振り上げた。
ハッとし、咄嗟に両手で頭を覆った。
ドスン!
背中から腰にかけて、重量のある痛みが響いた。
「うっ…。」
声が出ない。
全身が痺れたように重く感じる。
―ここまで来てこんな…