分岐点 (後編)
杉川瑞樹視点
気を失ったのは、きっと2、3秒だった。床にうずくまったまま目を開けた。
振り返ると、そこには雅也君ではなく、雅也君のお母さんが立っていた。
「坂、木、さん…。」
視界がグラグラする。
「勘がいいじゃない、みくびっていたわ。」
坂木さんは手に何か棒のようなものを持っていた。長い棒を片手に、髪を乱した立ち姿は…、まさに竜輝に読んであげた絵本に出てくる鬼のよう。
「病院に探しに戻ったのかと思ったら、ここを探し当てるなんて」
「…」
「私、一旦病院へ行ったから、手間取っちゃったわ…」
周りを見ると、当の雅也君は部屋の隅っこで膝を抱えて小さくなっている。
「雅也、私のかわいい雅也。もう大丈夫よ」
そう言いながら、雅也君へ近づき、頬をそっとなでた。
「お母さんが守ってあげるから、かわいそうに…」
坂木さんがぶつぶつ呟いているが、雅也君は聞こえていないのか、ぼんやりとしている。