分岐点 (後編)
次の日、杉川さんの奥様を見かけた。
杉川さんは看護師としての道を選んだことは認めるが、私の雅也と親しく話している姿には嫌悪感を抱く。しかも、子ども二人がよく雅也にじゃれついている。
私の雅也は、あんたたちとは違うのよ。夫同士の仲がいいから、付き合ってるだけよ。
しかし、その日は杉川さんの様子が違った。
私たちの病院をじっと見つめている。その姿は、かなり汚く驚いた。服装も、化粧も、私だったら恥ずかしくて外に出ることもできない。ましてや、近所なんて誰に見られるか分からないのに…。
声をかけざるを得なかった。大事な『ご近所さん』として。
「よく雅也がお世話になってるみたいで…。」
社交辞令としてのお決まりの言葉。
しかし杉川さんの話を聞くうち、先ほどまでの余裕がなくなり、みるみる自分の血の気が引くのを感じた。指先が振るえる。
昨日から行方不明って、…その子なら、昨日うちにいたわよ。
冷静に話をしなければ。
大丈夫。昨日の夕方、竜輝君がうちに来ていたのは誰も知らないはず。
まさか、まさか。
いや、そんなこと、あるわけない。
うちの雅也に限ってそんなことあるわけない。