分岐点 (後編)
「…あぁっ、あ、あああぁっ…!!!」
それは、真っ白で、全く動かない。
血が通った人間の手には思えなかった。
でも、竜輝の手に違いなかった。
そう思いたくなかったが、あの手は竜輝の手だ。
保育園に行くときにつなぐ手。
私の手ですっぽりと隠れてしまう手。
眠るときにつなぐ手。
この世に生まれた日からずっと見守ってきた、手。
見間違えるわけがない。
押入れの隙間から覗くその手は、相変わらず動かない。
「…はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
―嫌だ、嫌だ、嫌だ…。
ガクガクと全身が震える。
必死に震えを抑えながら、四つん這いのまま近づく。
近づくにつれ、手のしわも見えてくる。より鮮明に。
「…ぅうう、あああぁ…」
胃液を飲み込みながら、その手に触れようとした。
その瞬間、頭に大きな衝撃を受けた。
目の前にモヤがかかる。
―…竜輝…