分岐点 (後編)
―雅也君が、あの雅也君が、竜輝に何をしたの…。
「…雅也君、…お願い!竜輝に会わせて!!」
あの日と同じように雅也君につかみかかった。
けれど、雅也君の反応はあの時とは全く違った。
「ぅぅうるさぁぁーいぃぃっ!!!」
「きゃぁぁっ!!」
何が起きたのか分からなかった。
身構える暇なんかなく、強い力で吹っ飛ばされ、本棚に激突していた。
崩れるように座り込む。
痛みを感じる間もなく、本棚からドサドサと重い本が降ってきた。
ハッ、ハァッ、ハッ、ハァッ…
ハッ、ハァッ、ハッ、ハァッ…
どっちの息遣いか分からない。
ぶつぶつと独り言が聞こえる。
爪を噛む音が響く。
雅也君から目を離さず、棚に手をかけ、よろよろと立ち上がった。
その時、異質なものが目に飛び込んできた。
「…っ!!」
思わず手を引っ込めた。声が出ない。
清潔感漂う部屋に似つかわしくないものがある。