分岐点 (後編)
灯りのもれる隙間から覗くと、…そこには誰もいなかった。
立ち上がり、中へ足を踏み入れる。
オレンジ色の灯りは、電灯の豆電球の灯りだった。ぼんやりと部屋の中が照らされている。
机、押入れ、ベッド、本棚…
壁には自分の影が伸びる。
―ここは…
おそらく雅也君の部屋だろう。難しそうな参考書がずらりと並ぶ本棚は、天井まで続いている。
―なんだか、この部屋…
おかしなところは何もないのだが、気味が悪かった。
―なんでだろう…
よく見ると、その理由が分かってきた。
この部屋には、中学生らしさが感じられないからだ。
ゲームもない、マンガもない。本も服もきれいに整理整頓されていて、モデルルームのような部屋だ。生活感がない。本当にここは雅也君の部屋だろうか。
しばらく呆然としていたが、ふと背後に人の気配を感じた…。
後ろで微かに聞こえる呼吸音。ゾクッと寒気がしたが、振り返れない。
誰か立ってる。すぐ近く。
誰…?誰…?誰…?誰…?
息が止まりそう。