分岐点 (中編)
玄関のガチャリと開く音に、ハッと目が覚める。
浅い眠りだったのだろう。夢を見ていた気もするが、どんな夢だったか思い出せない。
不思議な感覚だった。
―左手が熱い…。
千恵の感触かとも思ったが、見るとすでに千恵は私の足元のほうにまで転がっている。
「すごい寝相だな。」
啓一が寝室へ入ってきて、千恵にふとんを掛けなおした。私はじっと左手を見つめる。
「どうかしたか?」
啓一に尋ねられたが、答えようがなかった。
首を横に振り、部屋から啓一が出て行くのを見て、私も静かに立ち上がった。
―竜輝は生きてる
そう確信した。私の心の中で何かが変化した。