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分岐点 (中編)

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 ―まさかねぇ…
 そう思いながらも、千恵を寝かしつけるために一緒にふとんへ入る。
その夜、啓一がもどってくるまでの間、千恵を寝かしつけつつ、千恵の存在を感じながらついうとうとと睡魔に襲われた。
千恵は私の枕を半分使いたがるから常に狭い。でも、その分、千恵の体温を近くに感じて安心する。少し鼻がつまってるのか、鼻息が大きい。
竜輝は私たちの真似をして、自分だけの枕を使いたがる。こういう時だけ『お兄ちゃんだから』って言う。寝入ったら、枕なんて何の意味もないくらいの寝相の悪さなのだけど。
竜輝は寝入るまで、私の左手をずっと触っている。ぎゅっと握ったり、親指のつめをはじいたり。その小さな手の暖かさに、私のほうが先に眠りにつくこともよくあった。
寝入り始める頃は、体温が上がり、手先が特にぽかぽかと暖かくなる。私の手のひらにすっぽりとおさまる小さな手。この小さな手にたくさんの未来が託されているのだ、そう考えるといつも不思議な気持ちになっていた。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二