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分岐点 (中編)

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正直、怖い話とか苦手だ。
自分に霊感だとかも全くない。
だから、千恵の行動も、時間が経ちそれほど気にとめなかった。
自宅では、啓一に会いぴょんぴょん飛び跳ね、実家での出来事を一生懸命伝えていた。
啓一もおだやかな表情でその話を聞いていた。
幸せなひと時。
ただ、竜輝がいないだけ…。
その夜、啓一は町内の男性たちと一緒に捜索に出た。見送りをし、家へ戻ると千恵が人形やぬいぐるみを並べており、何やらごにょごにょと話している。いわゆる『ごっこ遊び』が大好きな年頃。保育園でも、ぬいぐるみをおんぶしたり、はんかちをエプロンのようにし、お母さんごっこしているのをよく見かける。
千恵を風呂に入れようと声をかけた。
「千恵ちゃん、お風呂に入るからおいで。」
「うん、分かった!じゃあ、おにーちゃんまたね!」
千恵はこちらを見ずに、見えない誰かに手を振っている。
「……」
私は手にした千恵のパジャマを落とした。ドタドタと大きな足音で千恵が近づき、足元をすり抜け、一人風呂場へと駆け込む。
「かーちゃん、脱げないよー!!」
ハッとする。
「ち、千恵ちゃん。誰とお話ししてたのかなぁ?」
千恵のシャツを脱がしながら聞いた。
「おにーちゃん。」
「お兄ちゃんって、…誰?…竜輝?」
まさかと思いながら、できるだけ冷静に尋ねる。
「千恵ちゃん、ひとりでパンツ脱げるよー!」
早足で浴室へ入り、ぎゃははと豪快な笑い声が浴室に響く。
その場に座り込み、しばらく動けなかった。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二