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分岐点 (中編)

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それから、不思議な出来事があった。
父母にあいさつをし、実家から自宅へ帰るため、いつものように千恵を自転車の前に乗せた。
自宅へと自転車を走らせている間、千恵がやたらと後ろを気にして、何度も振り返る。
―後ろに竜輝がいないことが、不思議なんだろうか
横断歩道で自転車を停め、一旦降りて自転車のスタンドを立てた。
千恵は私の後ろを見ようと身を乗り出す。
「千恵ちゃん、あぶないよ。」
そう言うと、千恵は私の後ろを見ながら
「だって、誰かいるよー。」
と答えた。
―えっ??
お友達が通ったのかと思い、振り返るが、それらしき人は誰もいない。
「どこ?」
「かあちゃんの後ろ。」
「後ろ?どこ?…もしかして、…ここ?」
きょろきょろしたあげく、まさかとは思いながら、後ろの椅子を指差した。
「うん、後ろにいたよ。」
「……」
言葉を見失っているうちに信号が青に変わる。
「ち、千恵ちゃん、ねえ、誰…。」
「かーちゃん、青だよー!!」
いつものように自転車を揺らす千恵。
「う、うん、ねえ、千恵ちゃんてば。」
自転車を押し、声をかけるが、千恵はクリスマスの歌を歌い始めてしまった。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二