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分岐点 (中編)

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壁にぴったりと耳を当て、ほんのわずかな音でも聞き取ることができるように構えていた。足音がかすかに聞こえる。
全身に力が入る。
静まれ、心臓。
パーカーのポケットに手を突っ込む。
それをギュッと握りしめた。
コンクリートの冷たい壁越しに聞こえる。ジャラジャラと金属の音。
合わせて自分の心臓の拍動。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ…。
拍動が耳に響く。
お願い、静まれ、心臓静まれ。
鍵穴に差し込まれる金属音。
ガチャリ…
ギギ、ギギギギギギ
扉がゆっくりと開かれる。
窓もない真っ暗な室内。光が入り込む。看護師は手にしていた懐中電灯を照らしながら一歩二歩と中へ入る。
私は足に力を入れ、いつでも飛び出せるよう構えた。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二