分岐点 (中編)
必死で脱出手段を考えた。
早く啓一にだけは真実を知らせないと…。
1階のトイレの窓や外来の入り口の鍵は甘かった。内側から手で開閉することができる。
ただし、この処置室は、看護師の入室時と退室時には必ず鍵をかけられる。
窓もないこの部屋の出入り口は、あの重厚な錆付いた扉しかない。
ここさえ抜け出せれば外に出ることはできるのに…。
それでも、いつか訪れるチャンスがあるはずだ。その時までに体力を温存しなければ。
古いエアコンからゴーッと低音が響き、埃が部屋の隅に転がる。
目の前には、昼食の残りのパンが無造作に置かれていた。
時間とともに薬効が薄れ、徐々にクリアになってくる意識の中、乾燥したパンにかぶりついた。