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分岐点 (中編)

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リビングにはあの朝、遊んでいたおもちゃがそのままになっている。
『みんな、竜輝が帰ってくるの待っててねー』
そう言いながら、蒸気機関車やミニカーなどのおもちゃをきれいに並べていた。ここでも、几帳面な性格が出るというか、おもちゃの大きさで順番に並べてある。それをいつも千恵が並べ替えてしまうもんだから、泣きながら私に訴えてくる竜輝。竜輝が泣いて怒ると、千恵も泣き出す、子ども特有の負の連鎖。
朝の忙しい時には、ついつい『お兄ちゃんなんだから、千恵ちゃんには優しく教えてあげて!』なんて言ってしまう。
『お兄ちゃんじゃないよ!竜輝だもん!!』
わんわんと声を荒げ、床に突っ伏して動かなくなる竜輝。
『お兄ちゃん』という言葉は、憧れの言葉でもあり、しかし一方では自分を見てもらってない言葉のように感じるのかもしれない。
―あんなに怒るんじゃなかった…
胸がぎゅうっと締め付けられた。
 
作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二