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分岐点 (中編)

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もう陽が沈む頃だろうか。
相変わらず、私は物音一つしない無機質な部屋にいる。
この部屋にいるだけで、狂いそうになる。
理性を保つのに精一杯だった。
意識がない時に、部屋の中の物品は次々と片付けられてしまった。
最低限の物しかない。いや、最終的にはベッドとふとんだけで、他にはベッドの頭元に取り付けられている、酸素管やナースコールだけだ。何もない。
気付けば自分の着ている服も、病院の寝衣になっており、血液で汚れたパーカーはベッドの足元に置かれている。
幾度も薬剤を投与され、私は抵抗するのをやめていた。
正確には抵抗するのをやめた振りをしていた。
そうするだけで、部屋に入ってくる看護師の人数が減った。
簡単なことだった。
だらりと体の力を抜き、目を合わさず、無言でいるだけで、看護師の対応も優しくなる。その間に、私は看護師の行動をじっくり観察していた。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二