分岐点 (中編)
「坂木さん、すみません」
「いいえ、こんなことくらい日常茶飯事ですよ」
啓一と坂木さんのやり取りを見ながら、私は千恵を抱きしめたまま動けなかった。
「啓一、お願い、信じて!私、おかしくないよ!」
頭を振って、髪を振り乱しながら叫ぶ。
「瑞樹、千恵をこっちに。…ちゃんと迎えに来るから、休むんだ。怪我の治療もしてもらいなさい。」
私は駄々っ子のようにずっと首を振る。
啓一がいつものように私を諭す。
啓一は本当に私のことを心配しているだけなのだろう。
きっとこの場は、竜輝がいなくなったことで私は精神に異常をきたしているという状況になっている。
誰も信じてくれない。
完全に私に分が悪い。