分岐点 (中編)
「杉川さん。」
声をかけられ、言葉を失う。
坂木さんが腰を落として、しゃがみ込む私と目線を合わした。
自然と体が強張り、金縛りになったように動けない。
「竜輝君や千恵ちゃんのためにも、一緒に病気を治しましょう。」
―な、何それ、病気って何よ…
そう言うと、坂木さんは千恵のほうへ顔を向ける。
「千恵ちゃん、大きくなったわね。」
千恵のほうへ白い手を伸ばした。
―…やめて
鳥肌が立つ。
「千恵に触らないでぇっ!!!」
千恵を引き寄せ、夢中で坂木さんを突き飛ばした。
一瞬目が合い、にやりと微笑むのを見逃さなかった。
―千恵…千恵まで連れて行かないで…!
―お願い、子どもに手を出さないで…!