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分岐点 (中編)

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廊下の角を曲がる。
「瑞樹!」
聞き慣れた声。そこには、啓一がいた。
―あぁ、啓一だ…
安心し、立ち止まって壁にもたれた。
無意識に笑顔になる。
啓一の足元には手をつながれた千恵がいた。
「かーちゃん!」
千恵がいつものようにドタドタと大きな音を立てながら駆け寄る。
腰を落とし、千恵を迎える。
飛び跳ねるように千恵が飛びついてきた。
「千恵ちゃん…。」
千恵の体温に、今が夢ではないことを確認した。
「かーちゃん、血ぃが出てる。」
薄手のパーカーに血が滲んでいる。
腕を伝って、廊下や足元に真っ赤な血液が滴り落ちている。
点滴を引き抜いたときからだろう。
両手首も皮膚がすれ、爪のはげた指からも流血している。
あちこちに、いつの間にかあざもできている。
―そんなこと、どうでも良い。
―それより、啓一に早くこの状況を知らせないと
「杉川さん。」
見知らぬ看護師が駆け寄る。
「病室から抜け出しちゃったのね。」
―病室?あれが…?処置室って言ってたじゃない…
「瑞樹、坂木先生と話したんだが、少し休ませてもらえ。」
啓一がそばに寄り、優しく頭をなでる。
千恵は変わらず私にぴったりくっついている。
―啓一、何、言ってんの?
動揺で咄嗟に言葉が出ない。
「竜輝のことは、こっちで頑張るから」
―なんでそんなこと言うの?
「お前は少し疲れてんだ。しばらくして入院して治療すれば治るらしいから。」
―治る?なんのこと言ってるの?
呆然としているうちに、看護師がてきぱきと私の腕に包帯を巻く。
―何、どういうこと?
―私がおかしいの?

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二