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分岐点 (中編)

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身をよじり、左手首を出来る限りの力で引き寄せる。
布はピンと張ったまま、ちぎれそうにはない。
顔を近づける。
―もう少し…
左手首に布が食い込む。ギリギリと布がきしむ。
布の端に顔を近づけ噛み付いた。
布が少し緩み始める。
―もう一息
引き寄せた布の端をもう一度深く噛み付く。
引きちぎる勢いで、噛み付いたまま引っ張り、結び目が一つ解ける。
手首に余裕ができ、布の輪から手首を抜けだせた。
半身を起こし、右手の拘束具をはずしにかかる。
左手が震える。汗ですべる。
結び目が硬く、爪の一部がはげた。
狂いそうになりながら右手を無理矢理引っ張り、手首がすれる。
「…ああぁっ!!」
体全身を使って手首を引っ張り、抜け出した。
「…はぁっ、はぁっ…」
肩で息をする。
自分の知らないところで、何かが行われている。
―とりあえず、ここから逃げなきゃ…
本能がそう指示する。
右腕に刺さっている留置針を、固定テープごと引き抜いた。
転がり落ちるようにベッドから離れる。
あちこち体をぶつけながら、扉までたどりつく。

作品名:分岐点 (中編) 作家名:柊 恵二