分岐点 (中編)
ガチャリと鍵の開けられる低い音がして、ゆっくりと重い扉が動き出す。
開けられた隙間から白いサンダルが私の顔の前に、にゅっと現れた。
息を呑む。
見上げると、そこには雅也君のお母さんがいた。
私は身構えたが、そこに居たのはいつもの穏やかな坂木さんだった。
「杉川さん、ごめんなさい。」
そっと手を伸ばし、私の体を優しく起こすとベッドまで誘導してくれた。
ベッドへ腰掛ける。
「さっきは荒っぽい事をしてしまって…。」
そうだった…さっきも今も、坂木さんはみかけによらず、かなり力が強い。
「ご存じの通り、うちは精神科がメインです。ですからあんなに大きな声を出されると患者様がパニックを起こされますので。」
「すみません…。」