分岐点 (中編)
狂ったように、そう叫んだ瞬間、雅也君につかみかかっていた腕を後ろから強くつかまれ、一瞬するどい痛みを感じた。
「痛っ!」
振り返ると、雅也君のお母さんだった。
普段の装いからは考えられないほどの強い力。
「申し訳ありませんが、他の患者様がおられますので…。」
にっこり微笑むその表情からは、真意が読み取れなかった。
「そんなの関係ないっ!」
そう叫んだのを最後に、私は声を発することができなくなった。
―声が出ない
めまいと、足のしびれを感じた。
―なんで…
―そういえば…
薄れる意識の中、防犯カメラの映像を見た時の違和感を思い出した。
そうだ、あの時の影の不自然な動き、あれは竜輝の頭をなでるしぐさに見えたんだ…。
いったい、誰が…。
まさか…。