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分岐点 (前編)

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この時間帯はちょうど学生たちの登校時間と重なるため、冬服に包まれた思春期たちとすれ違う。
保育園の近くに小学校と中学校が隣り合わせに並んでおり、竜輝と千恵もここへ通うことになるのだろうなと思いながら学生の登校風景をながめていた。
その中、ふと見知った顔を見つけた。
「雅也君、おはよう!」
「あ、おはようございます。」
坂木雅也君は中学3年生で、ご近所の一人息子さんだ。
お父さんが心療内科と精神科を合わせた個人病院を経営しており、町内会では夫と仲がよい。『病院長』とは思えないほど、気さくな雰囲気で町内会の仕事も積極的に手伝って下さる。
お母さんは経営管理をしながら看護師として働いている。職場は違うが、私も看護師の仕事をしているので、顔を合わせた時は仕事の話をする。どちらかというと、物静かなタイプ。いわゆるお嬢様育ちで、正直なところさっぱり話が合わない。私より一回りくらい年齢が違うがそうは見えないほど、肌も身だしなみも綺麗。乱れているところなんか見たことない。
夫には『ああいう綺麗な奥さんになってくれ』といつも例に挙げられるのが雅也君のお母さんだ。言い返したいが、自宅では常にジャージかパジャマで過ごしている私は言葉が出ない。
そんな美人の奥様は、成績優秀で将来父親の跡を継ぐことになる雅也君がとにかくご自慢のようで、雅也君の話になると、突然饒舌に語り始めてしまう。
子どもの話をする時の私もこんな感じになってるのかしら…。
親バカな私は、雅也君のお母さんを見るたび、自分の言動に気をつけなきゃと思う。

作品名:分岐点 (前編) 作家名:柊 恵二