分岐点 (前編)
その時玄関の開けられる音が聞こえた。
啓一が顔を出し驚いたようだったが、小さな佑君に頭をなでられる私を見て、状況を察したようだった。
啓一の後から、昨日の刑事が出てくるのが見えた。
私は啓一に支えられながら体を起こしたが、足に力が入らない。
焦点も定まらない。
「田中さんには先ほど電話で説明したのですが、うちの竜輝が昨日から行方不明になっています。何か手がかりがありましたら、どんなことでもいいので連絡を御願いします。」
啓一が淡々と状況と協力要請を説明している。
刑事たちふたりも補足説明をしているようだった。
啓一に体を支えられているが、足元が沼に飲み込まれるように重い。
―もういやだ、なんでうちの竜輝はいないの
―よその子たちはこんなに元気でそばにいるのに
―私はどうなってもいいから、竜輝を返して…!!
動かない体を引きずられながら家の中へと入った。