分岐点 (前編)
―違う、竜輝じゃない…
一瞬の期待と大きな落胆だった。
「竜輝君のおかーさーん!」
かわいい声が響く。
田中さんも振り返り、ああ、と納得したようだった。
大きく手を振りながら走り寄るのは、佑君だった。
さらにその後ろに佑君のお母さんが走って追いかけてくる。
私の両足に佑君ががしっと飛びつく。
はあ、はあ、と息をあげながら、梅里さんがそばにきた。
「今日、たまたま昼迎えで、そしたらなんか大騒ぎで、緊急で説明会するとかで。谷里先生に聞いたら、竜輝君だっていうから…、ねえ、どうなってるの!?」
足元にじゃれつく佑君を見ると、涙が抑えられず、その場にしゃがみこんでしまった。
「竜輝君のおかーさん、どうしたの?痛いの?」
小さな手で頭をなでられる。
竜輝の感触を思い出す。
―ああ、神様、神様!
―もし本当に神様がいるんなら、早く竜輝に会わせて!
―竜輝が何したっていうの!
―どうか早く竜輝を返して!!