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分岐点 (前編)

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竜輝と千恵と一緒に、ゴミ出しをしていると、お隣さんが玄関から顔を出すのが見えた。
「杉川さん、おはよう!」
「おはよう、菜月ちゃんもおはよう!」
声をかけられ、返事をする。
お隣の松野さんとは、引越しの時期が同じ頃で、それからのお付き合いだ。
松野さんの足元に隠れているのは、竜輝と同じ4歳の菜月ちゃん。
「ほら、おはようは?」
パジャマ姿の菜月ちゃんはもじもじして、うつむいている。
「ごめんねー、最近人見知りがひどくなってきて。幼稚園でも決まった友達としか遊ばなくてさ。なかなか集団で遊んだりしないんよ。」
松野さんもゴミ捨てのために、サンダルを引っ掛けて外へ出ると、その後をあわてて菜月ちゃんが追いかけてきた。松野さんのスカートをぎゅっと握って顔を隠している。
「なつきちゃん、お顔見えないよー?」
竜輝が覗き込んでいるが、菜月ちゃんは石のように固まっている。
お隣さんといっても、私のほうは日中は仕事、たまの休みは家族で外出か保育園の行事に行くので、正直あまり顔を合わすことがない。
「そうなんだ、竜輝も初めて会う人には警戒して近づかないけど。」
「いつか治るのかしら…。幼稚園じゃなくて、うちも保育園だったら良かったのかな。」
もちろん、本音で言っているのではないことくらい、私でも分かる。
幼稚園と保育園の違いと、人見知りは関係ないと思うけど…と思ったが、話が長くなりそうだったので、言葉を飲み込んだ。
―世間一般では専業主婦がそんなに偉いのか…。私は自分の職業が好きで、この仕事をしてるのに。
朝からムッとなったが、それは価値観の違いなので、主張したところでしょうがない。
別に悪気があって言ってるわけではないのは分かっているのだ。
―ま、いつもことか。
適当に話を切り上げ、私は早々にその場を離れた。

作品名:分岐点 (前編) 作家名:柊 恵二