分岐点 (前編)
その後、なんて声をかけられたか覚えていない。
夢中でその場から離れた。
私、どんな顔してた?
どんな表情で菜月ちゃんを見つめていた?
全身に熱を持つ。自分の腕を抱え込むようにして、ぎゅっと力を入れた。
自分の中にこんなにも黒い感情があるなんて、そう思うとその場にいられなかった。
心がすさむ自分が怖かった。他人の優しさに素直になれない。
恥ずかしい、情けない。
でも、これが正直な気持ちなのかもしれない。
自分の子のためなら、他はどうなろうと…。
自分が考えていた、自分のイメージが崩れていくのを感じて鳥肌がたった。