分岐点 (前編)
十二月十九日(水) 五時十分
玄関先のフローリングに座り込んでいた。
頭を壁にもたれて。
―寒い
眠っていたのか、起きていたのか、はっきりと分からない。
玄関の扉が開けられ、朝日が入り込んだ。気持ちとは裏腹な清い空気。
思わず目を細める。
扉との隙間から光が廊下に伸びる。
「こんなとこで寝てたのか。」
啓一が帰ってきた。
昨日から着たままのシャツはしわだらけだ。ズボンの裾も土にまみれている。
「ほら、何か食べよう。」
啓一が手にしているコンビニの袋が目に入る。自分のおなかがぐうっと鳴る。
そう言えば昨日の昼食を最後に、何も口にしていない。
食欲はないが、体は食を欲している。
―こんな時でも、眠くなるし、おなかもすくのか…
ノロノロと立ち上がり台所へ向かった。
窓からは朝日とともに、スズメの鳴き声が入ってくる。