分岐点 (前編)
「もう1回、見せてください!」
何度も巻き戻し、再生を繰り返した。
加藤刑事は何も言わず、そんな私に付き合ってくれた。
何度見ても同じだった。
門につながる柵のほうへと歩き、画面から消えてしまう。
「ちょうど、カメラの真下に行ったんだと思われます」
林刑事が説明し始めた。
「この柵を乗り越えたことは、今までにありますか?」
「柵を…?大人の肩くらいの高さですよ?…あり得ません」
ましてや、怖がりの竜輝はそんなことしようとも思いつかないだろう。
「…でしたら、誰かが外側から手伝った可能性が考えられます」
―誰かが?
「お子さんが警戒せずに笑っているのは、そこに誰かがいたからじゃないでしょうか?」
―誰かが…
「杉川さん、大丈夫ですか。」
私はハッとした。
「あ、はい…、もう一度、見ていいですか」
瞬きもせずにじっと画面を見つめた。
竜輝の笑顔。確かに全く警戒していない、そこに誰かがいるような表情。
その後、竜輝の影。
…そして、他の親子たちにまぎれながら、竜輝とは別のもう一つの影が見え隠れする。
はっきりはしないが、2つの影が一つになり、ゆっくり画面から消えていく。
その映像を見ながら、胸にひっかかるものがあった。
しかし、それが何かは分からず、自分自身スッキリしなかった。