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分岐点 (前編)

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私が眠っている間に、加藤刑事はもちろん、警察本部のほうでも数人でこの画像の分析がなされ始めていたらしい。
もっと大騒ぎしないと警察は動かないものなのだと思っていたが、そうではなかった。
―頼りないなんて思ってしまって、申し訳なかった…
早送りの画像では、子を迎えに来た親たちや幸せそうな子どもたちが入れ替わり立ち換わり。手をつないでいたり、走っていく子を追いかけたりする親の姿が見える。その中には、迎えが一緒の時間帯になる、見知った親子もいる。
夕暮れ独特のオレンジがかった地面の色、伸びた親子の影。
画像の右下に写し出される時刻はちょうど私が迎えに行く頃の時間に迫っている。
「…あっ!!」
私の声とともに、加藤刑事は冷静に画像を停止させた。
「…お子さんで合ってますよね?」
加藤刑事は片手に竜輝の写真を持っており、もう何度も照らし合わせたようだった。
荒い画像だが、そこに小さく映し出されているのは、まぎれもなく竜輝だ。
私は言葉が出ず、ただ小さく首を縦に振ってうなづいた。
他の親たちの足もとにまぎれて、目を細めて笑っている。
いつもの竜輝だ。
何かいいことがあったのか、嬉しそうな顔。
自然と目頭が熱くなる。
「…少し巻き戻します。」
私をはさむように林刑事が左隣に座り、画像をあやつる。
停止させたところから、今度はゆっくり再生した。
親子の楽しそうな声と、夕方、保育園でかかっていた聞き覚えのある音楽が、音声としてパソコンから聞こえる。
親子にまぎれて、門のあたりにまで近づく竜輝。にこにこしながら画面左下へと消えていく。
オレンジ色の空気に伸びる影。
その影も徐々に見えなくなる。
門をくぐって出たわけではない。
しかし、それ以後、いくらじっくり見ていても竜輝の姿が現れない。
その5分後、私の後ろ姿が写り、他の親子とすれ違いざまにあいさつしながら小走りで門をくぐっている。
「…え、なんで…?」
画面上では確かに竜輝がそこにいた。
でも私が迎えに門をくぐったときにはいなかった。
たった5分の間に、何があったの。

作品名:分岐点 (前編) 作家名:柊 恵二