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分岐点 (前編)

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加藤刑事はずっとパソコンの画面を見ている。
動画らしきものが写っているが、画像も荒く、遠目では何の映像か分からなかった。
「あの…。」
声をかけると、加藤刑事は少し伸びた顎ひげを触り、ちらりと横目で私を見た。
こちらに顔を向けることはないまま、言葉を続ける。
「しっかりと目が覚めてからでよろしいので、確認してもらいたいものがあります。」
―…嫌味?…こんな時に寝るなってこと?
他人の言葉にいちいち引っかかってしまう。
「もう大丈夫です。」
長い髪をゴムで束ね直し、加藤刑事の隣に座った。
パソコンの画面を見ると、その画像は見覚えのある光景だった。
「…?」
―これ、もしかして…
「ひかり保育園からお借りした防犯カメラの映像です。パソコンの中に取り込んで、本部とともに確かめているのですが…。」
―やっぱり、そうか…
全国、どの保育園も防犯には様々な取り組みをしている。
特に、子どもたちが中から外へ出て行かないようにするためと、不審者や不審物が外から中へと入らないようするための2点が大きな課題である。
竜輝たちが通うひかり保育園は、朝・夕は親だけが知っている暗証番号で外門を開けることができる。込み合う朝と夕以外は、必ずインターフォンを通さないと外門を開けることができない。
もちろん、門といっても、大人ならば簡単に乗り越えることはできる。そのため、門の辺りには二十四時間体制の監視カメラが取り付けてある。
加藤刑事の隣で映像を早送りで見ていると、暗証番号を押すインターフォンの辺りから半径2~3メートル範囲が固定カメラで写されている。
「何度も見てるんですが、よう分からんのですよね。」
しゃがれ声でぼそぼそつぶやいているが、はっきり聞き取れない。

作品名:分岐点 (前編) 作家名:柊 恵二