自転車と淡い初恋
お互い、特にこれといった会話もなく。
でも、その沈黙も心地よくて。
川土手の夕焼けを見ながら、ただ自転車を走らせた。
しばらくすると、泉の家が見え始め、その隣の翔の家も見える。
(もうちょっと一緒にいても良かったのにな…)
「ほら、もうすぐ着くぞ?」
「うん…」
少しだけ元気のない、小さな返事が聞こえてきた。
「なあ……」
理由を聞こうとした、その時。
「おーい!雅司!」
「おっ、翔!久々だな!」
家の前に、コンビニの袋を手にした翔がいた。
「お前、なんでうちの家に…?」
「こいつを途中で拾ったんだ」
「『拾った』って、落し物みたいに…」
泉がブツブツ言いながら、俺の背中からひょいっと顔を出した。
「なっ、泉っ!?」
翔のヤツが慌てふためいている。
その姿を見て、俺はちょっとした優越感を感じた。