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自転車と淡い初恋

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「わ、悪かったな…」
俺はチラリと泉を見ると、少し頬が赤くなっているようだった。
「ううん、太一君、良い人だね?」
「急に抱きつくような軽いヤツだけど?」
「あははっ。でも私のこと覚えててくれたのに、私はなかなか思い出せなくて…悪いことしちゃった。」
少し眉を下げながら笑う泉を、本当にかわいいと思ってしまった。
「…ていうか、あんたをあんな場所に一人にしてすまなかった」
泉はキョトンとしている。
「お前は翔の大事な友達だからな、何かあったら…」
頭をかきながらそう言うと、泉は手を口元に当てながらクスッと笑った。
「…ありがとう…」
目を細める、その笑顔に俺の心はキュッとしめつけられた。
「よし、後ろに乗れ!」
俺は自分の心に芽生えかけた気持ちをさとられないよう、わざと大きな声を出した。
「え、う、後ろ?自転車の??」
「ほら、さっさと乗れ?日が落ちるのが早くなってきたからな。」
俺は自転車にまたがった。
「えっと、じゃ、じゃあ…」
泉は恐る恐る俺の自転車の後ろに座った。
「あの、雅司君…」
「どうした?」
「ど、どこを持ったらいいの?」
俺は後ろを振り返ると、泉が少し眉をひそめて本気で考えている。
「なんだ、自転車の後ろに乗ったことないのか?」
「うん…」
「ったく、ほらっ!」
俺は瑞樹の細い両腕を持つと、俺の腰のまわりにぎゅっと巻きつかせた。
背中に瑞樹の温かみを感じる。
「……」
泉は無言だったが、背中から緊張しているのが伝わってくる。
(っていうか…、俺もかなり緊張してんだけど)
「しっかりつかまってろよ!」
「うんっ…わっ…!!」
俺は勢いよくペダルを踏み込んだ。
自転車が動き始めると、乗り慣れていない泉の手に力がこめられる。

作品名:自転車と淡い初恋 作家名:柊 恵二