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自転車と淡い初恋

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俺は浮かれる自分を抑えながら、チャリに乗って校門のあたりにもどった。
その時、泉が背の高い男に腕をつかまれてるのが見えた。
「なっ…!!」
俺はカッなり、チャリを投げ捨て泉のもとへ全速力で駆け寄った。
「おいっ!何やってんだ!!」
そいつを泉から引き剥がすと、泉は慌てた様子で俺の後ろに隠れた。
「おっ、雅司?」
にかっと笑うそいつは、俺のクラスの太一だった。
「あぁ?なんだ、太一かよ。」
俺はホッと一息ついた。
「ていうか、学校の前で簡単にナンパしてんじゃねえよ」
睨みつけると、太一はケラケラと笑った。
「悪ぃ悪ぃ、だって女の子が一人でこんな男子校の前に立ってたら危ないと思ってさ」
ふと気付くと、泉が俺の背中のシャツをぎゅっと握っている。
(あ…、しまった…)
ガラにもなく、胸が痛んだ。
「おい…」
振り向いて声をかけると、泉は俺の背中からそっと不安そうな顔を向けた。
今にも泣きそう。
「悪かった。こいつは俺のダチで…」
「こんにちは~♪『泉ちゃん』だろ?こないだ学園祭の時に会ったの覚えてない?」
太一は人懐っこい笑顔で泉に話しかけている。
(ていうか…、『泉ちゃん』って…)
(俺だってまだ、名前で呼べねえのに…)
泉はハッと思い出したように、目を丸くした。
「お、思い出した!学園祭で雅司君と一緒に店番してた人だ!」
「そうそう」
「びっくりして、ごめんね」
「いえいえ。思い出してくれて、嬉しいよ!」
そう言って太一は今度は正面から抱きつこうと大きく両手を広げた。
「ちょ、ちょっと待て!」
俺はあわてて間に入って、防いだ。
(あっぶねぇな…、こいつ)
「どうしたよ、雅司。珍しいな?いつもはどうでもいいって顔してるくせに…」
「いや…」
俺は動揺してしまって、隣にいる泉の顔をまともに見ることができなかった。
「ああ、まさかお前の彼女…?」
「ち、違っ…。こいつは俺の親友の知り合いだから…」
「へぇ~…」
にやにやとした視線が痛かった。
「さっさと行けよ!どっか行くところだったんだろ!?」
「分かったって。じゃあね、泉ちゃん!」
太一はヒラヒラと手を振り、その姿が見えなくなった後、泉とふたりで若干気まずい雰囲気になった。

作品名:自転車と淡い初恋 作家名:柊 恵二