小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自転車と淡い初恋

INDEX|2ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


「おい、あんた」
思わずふと呼びかけてしまった。
「…?」
泉はくるっと振り返る。その時、サラサラした黒髪がふわっと風になびく。
驚いた表情とその大きな瞳に俺は釘付けになってしまった。
「あ!雅司君!」
目を細め、嬉しそうな声を発してくれる。
それだけで、なんだか心が暖かくなる。
「よう、久しぶりだな。」
心とは裏腹に、ぶっきらぼうな物言いになってしまう。
「うん!元気だった?やっぱり学校が違うとなかなか会えないね。」
「翔のやつはどう?」
『翔』が幼稚園の頃からの俺の親友。
「相変わらずだよ。私にだけ意地悪するのも変わらず。」
「ははっ」
翔も俺と同じで、いや俺以上に素直になれないヤツだ。
こいつに意地悪する姿が容易に思い浮かぶ。
そして、まだ翔が告白してないことに少しホッとする。
「ていうか、こんなとこで何してんだ。」
「日曜日だし、友達の家に遊びに行って、その帰りなの。雅司君は?」
「この近くに俺の学校があるんだよ。チャリ、投げっ放しにしてたから、そろそろ取りに行こうかと…。」
「じゃあ、途中まで一緒に行こ?」
肩にかけたかばんを掛け直しながら、にっこり微笑む。
なんで、こいつはドキッとさせることを、サラリと言うのだろう。
こうやって、いつも結局こいつのペースになる。
毎日、喧嘩ばっかやってた俺。
こういう穏やかな時間を過ごせるのも、いいもんだな。


初めて翔の隣に、こいつがいるのを見たのは、高校1年の夏。
家族ぐるみの付き合いで、海に行った時。
春に、翔の家の隣に引っ越してきたとか。
初めて紹介された時は、すでに翔が泉のことを好きなんだって、すぐ分かった。
親友の好きな女。
好きになったら駄目だって、思えば思うほど、気になる存在になっていった。

作品名:自転車と淡い初恋 作家名:柊 恵二