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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 「あれ……」
 丸山花世が自分の席に戻ってきたときには、すでにそこには待ち人と思しき人物の姿があった。
 頭を丸刈りにした髭の男。年齢は三十から四十の間といったところか。
 男は大井弘子と何か言葉を交わしている。
 耳にはピアス。ちゃらちゃらした感じの男、というわけではないが、だといってカタギには見えない。遊び人のような人物である。
 ――業界人っぽくない奴だな。
 見るからにオタクっぽい男ではない。
 ――パチスロとかパチンコの雑誌作っている編プロの人間みたいな感じだな。
 丸山花世は冷静に男りの様子を眺めている。男がつけているのはジーンズにティーシャツ。その上から麻だろうか半そでのシャツをつけている。足はサンダル。
 ナンパな人物。丸山花世は奇矯な人物が好きであり、逆に洒落男への評価は厳しいのだ。
 「花世」
 大井弘子が呼ぶ声があり、妹はトレーを抱えたまま姉のそばに戻る。
 「花世です。私の相棒で妹です」
 大井弘子はそのように言い、丸山花世は特に頭も下げないで遅れてやってきた男のことを見ている。 「ああ、妹さんですか……随分とお若いですね。学生さんですか?」
 前日会った三神は変人だったが、元の上司である市原は如才が無い。とりあえず会話はできるまともな社会人ではあるらしい。
 「市原と申します……」
 男はそう言って小娘に名刺を差し出してくる。小娘はトレーを机のテーブルにおいて、名刺を受けとった。
 「ごめん、私、名刺持ってないんだ……」
 「そうですか」
 丸山花世は相手の名刺をじっと眺める。
 ――16CC エグゼクティブプロデューサー 市原明和
 「ふーん」
 丸山花世の態度はぞんざい。だが、上の空の小娘を誰もなじったりはしなかった。
 「いやー、大井さん、お綺麗な方ですね。話には聞いていたのですが……」
 市原は言った。大井弘子はただ笑っただけだった。
 「そうだ、資料をお持ちしました。これまでのエターの作品全てと関連書籍……」
 男はそういって大きな紙袋を出してくる。
 「確認してみてください」
 「はい。分かりました……」
 大井弘子は紙袋を受け取る。中にはプレステのゲームが数本。さらには攻略とイラスト集がセットになったファン向けの資料本が数冊。たいした重さである。