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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 「三神のにーちゃんは、市原の部下だった人で……でも、キンダーは潰れた。で、三神はブランに行っちまった。ブランはエターの権利を持ってて、で、その権利を、市原っていう人が入った16CCに貸した」
 人間関係は複雑である。
 かつての上司と部下。部下が元受会社に再就職。上司は下請け。
 「心理的に、難しいものってあんのかね。かつての上司と部下」
 「そうね。男の人はそういう上か下かに敏感だから。特に宮仕えであれば……」
 「つまんねーなー。会社員って」
 丸山花世は心底つまらなそうに言った。
 「でも、一人ではない。誰かがそばにいてくれるのはいいものかもよ?」
 「そうかねー。足引っ張るだけの仲間ならいねーほーがよっぽどましだよ」
 妹はあまりの暑さに耐えかねてブラウスの胸の辺りをつまんでばたばたと扇ぐようなしぐさをしてみせる。と。大井弘子の足が止まった。チェーンのコーヒーショップである。
 「ここ?」
 「そう。ここ……」
 たいして味も良くなければ、落ち着いて話も出来ないチェーンのコーヒー店。椅子も安っぽくて、あまり居心地のよい場所とは思われないのだが……。
 「ふーん。なんか……安い打ち合わせだね」
 丸山花世ははっきりと言った。
 話をするならばするで、格式というものもあるのではないか。なんでも良いから顔をつき合わせば良いというものではないし、何よりも、相手に対する礼儀というものがある。
 ――おまえらなんか安いチェーン店で十分なんだよ。
 と相手に取られては発注者の側も逆に、『こいつはその程度の礼しか尽くせない器』と侮られてしまうのではないか。だが。
 「私のほうからここを指定したの」
 姉は言い、妹は尋ねる。
 「どうして?」
 「うん、それは……」
 姉は言いかけ、そこで姉のカバンの中で携帯が鳴った。飾り気のないベル音である。姉と妹は性格も顔も似ておらず、それは血統的に当然なのだが、着信の音に関する趣味は似ている。
 「……ちょっと待ってて」
 大井弘子はそのように言い、カバンの中から携帯電話を取り出した。
 「はい。もしもし……ああ、そうです、はい……私です……」
 「……」
 妹分はぼんやりとあたりを見回すばかり。
 ――それらしい野郎は……見当たらんな。