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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 「……そうね」
 「何が良くない?」
 「特に何がってわけじゃないんだけれど……とにかく、行きましょうか」
 大井弘子は言うとすぐに歩き出す。妹もそれに続く。
 「……やっぱり、ゲームの会社じゃないのね。母体が音楽の製作会社だから」
 「ヤクザもんの会社ってこと?」
 雑踏を掻き分けるようにして渋谷方面へ。
 「そこまでは言わないけれど。芸能プロとかそういうのに近いのかもね。声優のイベントやったり、音楽作ったり……社長さんは自分で曲を作ったりもするみたいだけれど」
 「やっぱりカタギじゃねーじゃんか。よくわかんねーけど、社長がコカインやってるよーなところっつーことっしょ?」
 「どうかしらね。でも、物語を作る人々ではない。そういう人がトップということは……」
 「先行き暗ぇなー……」
 わかっている人間がトップでも回っていかない時代。現場がわかっていない人間がトップでは成功はおぼつかない。丸山花世は文句をはいて散らす。それは多分大井弘子も一度は思ったこと。
 「クリエイター社長ってダメだよね。予算の管理とかできねーし。社長は帳簿読めねーと。予算以上の制作費突っ込んでどうすんだよな」
 「そうね」
 いつもであれば丸山花世の言葉を笑って聞き流す姉の表情が硬い。状況は要警戒レベル。
 「……で、どこ行くの? 16CC本社?」
 「いいえ。そうではなくて……」
 昨日のブランとの打ち合わせの場所は品川の本社オフィスだった。本日は……。
 「それにしても……昨日の今日で、えれー、急じゃんか」
 「そうね……」
 大井弘子は歩きながら言った。白いスニーカー。美人の女主人はヒールを履くということがほとんどない。それでもスタイルがいいので、見栄えが悪くなると言うことも無い。
 「こんなに急な呼び出しは……ブランのほうから連絡がいったからなんかね?」
 丸山花世はそういいながら雲ひとつ無い青空を見上げる。紫外線の量はおそらく半端ではないはず。
 ――私のほうからも市原には、お二人をこちらでも使う旨、伝えておきます。
 ブランの事務所を出るときに、三神はそのようなことを言っていた。緊急の接触には、ブランでの動きも関係しているのか。
 「そうかもしれないわね」
 かつての部下の動き。市原はそれを気にしているのか。