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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 うつろに輝く中年男のピアスを見ながら丸山花世は長いため息をひとつ。
 
 恵比寿の駅前は人が多く――。
 丸山花世はアネキ分に連れられてエスカレーターを上へ上へと登っていく。どこか気の抜けた、うつろな打ち合わせで得るものは……あったのだろうか。
 「なー、アネキ……あの市原って大丈夫なのかね」
 「さて……」
 丸山花世は疲れ果てている。
 「なんか変なんだよなー。アニメ化とか、仕事はいくらでもありますとか……PSPのゲーム作りますとか……なにもかもが微妙にずれてんだよなー
 大きな態度というわけではない。お前らに仕事をくれてやってるんだという尊大な態度ではない。そつなく仕事をしている。だが何かがひっかかる。何かが足りない。何かとても大事なものが……。
 「FMBとか……メールアドレスに昔自分がやってた会社名を残すって言うのもさ。臥薪嘗胆って奴なのかね? 面従腹背を公言しているみたいであんまり感じよくないと思うけど。もう会社なくなったんだから、過去は過去って割り切らんといかんと思うんだけど……未練がましいんだよな、あのおっさん」
 丸山花世の手には紙袋。紙袋には叩き売られた可愛そうなゲームが入っている。
 駅ビルの外は熱波に包まれている。今夜も寝苦しい夜になるのか。
 と。大井弘子はぽつりと言った。
 「あの人……うつ病かもしれないわね」
 「……」
 「発言に整合性もないし、覇気もない。調子よくあわせているけれど、頭の中が本当に回転しているのかどうか……」
 「うーん……うつ病か」
 「一時でも会社のトップを張っていたわけでしょう。そういう人間があれでは務まらないと思うのね……だとすれば」
 「頭の病気か……」
 親会社が吹き飛び、自分の会社も轟沈。自分が社長だった頃に未練たらたらなのはメールアドレスでも分かる通り。
 「そんな奴をトップに戴いて、大丈夫なのかね、このプロジェクト……」
 「……さて」
 大井弘子は首をかしげている。
 そろそろエスカレーターは途切れようとし……そして途切れる。丸山花世は紙袋を肩に背負うように持ち直すと改札に向けて歩き始める。そして。物書きヤクザはしんみりとして言った。
 「ほんとに可愛そうな作品だよね、エターナルラブって……」
 「……」