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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 市原の言葉は曖昧だった。丸山花世はふーっとため息をついた。生意気な小娘はそういうことを言っているわけではないのだ。
 ――逆。だろ?
 ゲームを作って、ノベライズ。マンガ化。アニメ。権利ビジネス。そういうメディア展開が行き詰ってうまく回っていかないから会社は左前になり、その心労で社長が倒れた。だから銀行は融資を止めた。社長が倒れても金が回ってれば銀行も融資を止めたりしない。むしろ、早く次の代表を立てろと会社をせっついてくるはず。キンダーも潰れたりはしなかったのに違いない。
 「資金的なものがクリアーになって座組みが変わってますから、あとは問題もありませんから」
 市原は言った。
 「ざぐみ?」
 聞きなれない言葉に丸山花世は首をかしげた。
 「ざぐみって……何それ?」
 ぶしつけな小娘に、市原はちょっとだけたじろいだようである。
 「会社の組織が変わったと……そういうことです」
 「ふーん。だったらそう言やいいじゃんよ」
 業界用語……なのだろうか? 個人にしか分からない私用語を振りかざされても女子高生には理解できないのだ。
 「……まあいいけどさ」
 丸山花世は頭を振るようにして言った。そして市原は言った。
 「僕としては、大井さんたちに賭けているわけですから……どうか魂削ってがんばってください」
 「……」
 丸山花世はもう一度長いため息をついた。
 ――魂削れって……あんたねえ。
 表現が大げさ……というか、芝居がかっているのか。市原は自分が格好いいことを言っていると信じているのか。だが。
 ――軽々しく言うような言葉じゃないよなー。魂削れなんて……。
 妹はそのように思い、姉も呟く。
 「魂を削る……ですか」
 時々だが、自分が何を言っているか分かっていない人間がいるのだ。
 「はい。お二人には期待しています。とりあえずはゲームをやってみてください。さっきお渡しした紙袋にこれまでの作品、全て入ってます」
 「うん……」
 丸山花世は頷くと、紙袋の中からパッケージをひとつ取り出す。エターナルラブ。無印の作品。市原は言った。
 「それが最初の作品ですね。エターの第一作」
 「……って、あれ? 二千円? 安くない?」
 丸山花世は言った。値段は二千円。