むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2
市原は自信たっぷりに言った。
「新興市場ですが株式も公開していますし、そのあたりは大丈夫です」
「……」
丸間花世は口をつぐむ。確かにそう。そうなのだろう。大きな企業。大きなバックボーン。けれど……。
――何かが違うんだよなー。
何かがずれている。何かが。どこかで狂っているのだ。
「PSPでもエターの作品を作る計画が進行していますし……」
市原は言った。
「いろいろとメディアの展開もしていこうとそう考えておりまして……とりあえず、アニメにまで持っていきたいと、そう考えています。その前にまずはドラマCDですね。お二人もこれから忙しくなると思いますよ」
エグゼクティブプロデューサーは言い、大井弘子がぽつりと言った。
「アニメ……ですか」
「そうです。NRTのグループ企業にはアニメの製作会社が含まれています。そこと連携してやっていけば、アニメ化は可能ですし、実際、そのような動きも始まっています」
「……」
「派生商品がいくらでも作れますからね。アニメのシナリオ。ドラマCD。民放ラジオ。あとはマンガ、小説……お二人とも頑張って稼いでください」
市原の言葉に、丸山花世は内心で首をかしげている。
――こいつ……なんかおかしいな……。
市原の言っていることは、正しいのかもしれない。いや正しいのだろう。だが。何かが、おかしい。何かが狂っている。
「ギャルゲーっていうのは基本的に、周辺産業がおいしいんですよ。キャラクタービジネスでお金が入ってきますから」
市原は本当に、おいしいと思っているのだろうか? 本当に?
「だったらなんでキンダーって会社は潰れたの?」
丸山花世はずばりと切り込んだ。
「そんなにいろいろとメディア展開して……なんで、キンダーは潰れたん?」
失礼なことを言うなと大井弘子は妹を止めたりしない。それは大井弘子も確認したいこと。市原は応じる。
「いや、キンダーは社長が病気になっちゃったんですよ。銀行が融資を続けるとか続けないとか、そういう話になっている時に社長が倒れて、それで、銀行も融資を止めようと、そうしているうちにずるずると倒産ということに……」
「つまり……原因は社長さんの健康問題にあると?」
「まあ、そんなところです。あとは銀行の思惑があって……」
作品名:むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2 作家名:黄支亮