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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 「ええと……それでは森田さんのほうからお話はあったと思うのですが、お二人には弊社のエターナルラブの最新作のシナリオをお願いしたいのです」
 「……」
 大井弘子は黙っている。そして、丸山花世も。
 姉妹だから分かるということがあるし、姉妹だから感じるポイントが同じということもある。
 ――森田?
 丸山花世はその一点に引っかかり……ということは、多分、大井弘子の沈黙も、その部分に引っかかったのだろう。
 ――森田……。
 確かに話を寄越してきたのは外注の森田。けれど……。
 ――三神のことは?
 三神智仁は、
 『自分のほうから市原には連絡しておく』
 と昨日言っていた。
 『ブランのほうでも何か作業をしておられるようですね』
 ぐらいの発言は市原からあってよさそうなのだが。もとより三神は市原の部下だったはずで、だとすればまずはかつての部下の名前が出てくるはずではないのか。
 「……?」
 なんとはない違和感、である。もっともそれはさほど大きな問題ではない。多分、今は……。
 「ご存知の通り、エターは今回が六作目となるわけです。来年は十年目の区切り。そこで蒼ファルで知られる大井さんにシナリオをお願いしたというわけです」
 「……」
 大井弘子は黙っている。丸山花世も市原の表情を見ている。
 「エターも七、八とどんどん続けていこうと思っています。六作目が調子が良いようであれば、七作目も大井さんに頼もうかと、そう考えてます」
 「七作って、ねえ……」
 丸山花世がこらえきれなくって呟いた。
 「……キンダーって潰れたんでしょう?」
 女子高生の呟きに市原は口を閉ざした。
 「キンダーは潰れて……エターナルラブのカーテンコールもやっとのことでリリースしたわけじゃんか……」
 そんなへとへとの作品、七作も八作も作れるのか。作るだけの余力はあるのか。
 「……一度死んだ人間、生き返んないみたいに一度死んだ作品、蘇らんよ。新しい16CCって会社、キンダーの十分の一の資本金しかないんしょ?」
 丸山花世は悲しげに言った。だが。市原は小娘の意見をまったく聞かなかった。
 「いや、それは大丈夫です。16CC単体の資本は小さいですが、親会社のNRTは四十社の企業を束ねるグループ企業ですから」