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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編2

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 ――寄せ集めの会社16CC。社員の気持はひとつになりきれてないってことか?
 丸山花世は思っている。もちろん、そんなことを小娘が考えているとはおそらく市原は考えもしないはず。
 「いやー、お待たせしました……」
 男は腰を低くして言った。それが本当に大井弘子を敬しての行動かはわからない。
 「本当は、知り合いの店にご招待しようと思ったんですよ。魚介のおいしいお店を知ってるんですよ。そこでワインでも飲みながら……」
 市原は言い、大井弘子は薄く笑った。
 「そうですね……ただ、私も夜は出られないものでして……」
 「そうでしたね。お店をやられていたんですよね。聞きました」
 市原は大井弘子の本当の理由を知らない。つまり、
 ――重要な会合にアルコールは邪魔。
 「いやー、それにしてもお美しい。森田君のほうから聞いてはいたのですが……ああ、これは失礼でしたか……」
 市原は繰り返した。そして、そこで妹分は思った。
 ――こいつ、相当の女好きだな……。
 美人を褒める。一度褒めるのは外交辞令。二度褒めるのは下心があるから。もっとも、今はセクハラ訴訟が恐ろしいから、相手の容姿を一度褒める人間すら珍しい。
 「さっそく本題に入りたいのですが」
 大井弘子は『下心』を疎ましく思ったのか事務的に言い、そこで市原は言った。
 「……それでは改めまして、自己紹介を。市原明和と申します。16CCでエグゼクティブプロデューサーをしております。一応ゲーム部門の取締役をしています」
 「大井弘子……ペンネームは一矢と申します。こちらは妹の丸山花世です」
 丸山花世は何も言わずに頭を下げた。
 「ご姉妹でシナリオライターですか、たいしたものですね」
 大井弘子は微笑で返し、一方、丸山花世は市原の耳を凝視している。片耳につけたピアス。
 ――いい大人が光モンか。感心しねーよな。
 「丸山さんは……学生さんですか?」
 市原は先ほど小娘にぶつけた質問を繰り返した。物書きヤクザは、
 「ああ、うん。そう」
 と気のない返事を返した。いつもの丸山花世であれば『見りゃ分かんだろう?』と切り返すところではあるが、そうはしない。市原という男の内面を見切っておきたいと思ったからである。