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我らアスター街17番地区ストレングス部隊

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 サシクの描いた聖人は、足の部分の絵具が剥がれ、幽霊のようになっていた。その聖人だけではない。そこに描かれている聖人すべて、足元が薄くなっている。
「ああ、これ? お祈りの跡でしょ」
 言ったのは、サイラスだった。
「ほら、願掛けをする時とか、お願いが叶ったときに、皆絵にキスしていくんだよ。顔や手は畏れ多くて、皆足にするんだ。見たことない?」
「いや、知ってるけど」
 なんとなく、普通の人間である自分が描いた絵が、祈りの対象になっているのが不思議な感じがしたのだ。もちろん、皆絵そのものに祈っているのではなく、聖人に祈っているのだが。
「すごいですわねえ。ここまでになるのに、のべ何人かかったのでしょう」
 ファーラが呆れたように、感慨深そうに言う。
「もう、有名になるなんてどうでもいいじゃありませんか。名前は知られていなくても、貴女の絵はありがたがられているのですから」
「う〜ん。なんだか丸め込まれたって感じ」
 それでも納得はしたらしく、サシクの姿はより薄くなっていった。
「まあ、本当に人の体を借りているわけにはいかないしね」
 サシクは一際高く浮かび上がった。
「教会で昇天ってのもなんかうまくできてるわ。じゃあ、ね」
 サシクの体が光に包まれる。全身の輪郭がぼやけ、細かな光の粒になる。
 金の粉の塊は、煙のようにふわりと空へ溶けていった。
「はー いっちゃった」
 サイラスの指からころんと指輪が抜け落ちた。

「しかし、幽霊って本当にいるんだな〜」
 酒場で度の低い酒をすすりながら、サイラスは呟いた。
「だけど、ただ働きでしたわね」
 こちらはきつい酒を飲みながら、ファーラが肴のサラダをつついた。
「結局、あの指輪取られてしまいましたわ。あのお年よりに」
 あの後、三人の前に指輪の持ち主だという老人が現われた。
 その老人いわく、買った帰りに指輪を落としてしまったとの事。宝石店の店長に確かめてみたら間違いないようだったので、ストレングス隊の義務としてタダで返してあげたのだった。
「なんというお名前でしたっけ、あのご老人。フォーズさん?」
「確かそんなだったな」とうなずいたアシェルはクスクスと笑う。
「三文小説だと、大抵このあたりで……」
「お前さん達、誰の話をしているんだい?」
 話を聴いていたのか、マスターが声をかけてきた。