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我らアスター街17番地区ストレングス部隊

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 ぽつりとサシクが呟いた。
「思い出した。この教会」
「え。なんで? もう?」
 慌てるサイラスに、サシクは右の壁を指差した。そこにあるのは、大きな壁画。
「ああ。聖人の絵か」
 壁画に近付くアシェルの足音が響く。
 それは太陽に腰掛ける神様の絵だった。その周りを、聖人達がそれぞれのシンボルを持って取り囲んでいる。
「確か、ここの壁画はラクルスという画家が描いた物だったはずだが」
「ラクルス! 聞いたことがある」
 つまり絵に詳しくないサイラスでも知っているぐらい有名ということだ。
「もしかして、ラクルスってサシクさんのペンネーム?」
「違うぞ。たしかラクルスは男だ」
「これ、これ! 私が描いたの」
 ヒソヒソ話をするサイラスとアシェルを置いてけぼりに、サシクは必死で聖人の一人を指差した。
「ああ。あんたはラクルスの弟子だったのか」
 教会のドでかい壁画は、誰々作となっていても重要でない部分は弟子が描いているのだ。その聖人の一人だけ、サシクが描いたというのも納得できる。
「思い出したわ。この指輪。この壁画を描いた人に、依頼料として教会がくれたものなの」
 すりすりとサシクは指輪に頬ずりをした。もちろんサイラスに感触はない。
「じゃあ、もう自分がなんで死んだのかも思い出したかしら」
 ファーラの言葉に、サシクは胸の辺りで両手を強く組んだ。
「ええ。私、この絵を描いた後、病気で。私、この絵でようやく実力が認められ始めて、これからって所で……」
「サイラス。賃貸決定ですわね。彼女の夢が叶うまでがんばりなさいな」
 ファーラがポンとサイラスの肩を叩いた。
「ええ、本気ですかファーラさん?!」
「ストレングス隊兼画家業か。大変だな」
「隊長まで! そりゃないですよ!」  
 アシェルにすがりつくサイラスに、ファーラは形のいい眉をしかめた。
「あら。夢半ばで倒れたかわいそうな女の子に同情いたしませんの?」
「イヤイヤイヤ、幽霊に取り憑かれた仲間の方にまず同情しましょうよ!?」
「冗談だよ、冗談。サシク、無念なのは分かるが、大人しく昇天してくれないか?」
「で、でもぉ」
 サシクは明らかに納得していない様子だった。
「今ならもうちょっとうまく描けると思うしぃ」
 自分の作品を見たサシクは、ふと動きを止めた。
「ねえ。あれ、なんで足の部分が消えてるの?」