神社奇譚 1-2 古井戸
ところが役員たるもの、暇を見ては社の状態を見に行かなくてはならない。
とくに最近近所の悪ガキが境内で集ってタバコを吸っていた!
等と云われると火を点けられちゃたまらない、とばかりに会社からの
帰宅途中に境内を見回ったりもすることもある。
で、その夜も見回りながら境内を歩いていくと
二~三人の役員が例の根っこの前で立ち話をしているのに出くわした。
「ぉぅ、おつかれ。
なんだよ、え?どうしてこんなところにいるかって?
なんかよ、この根っこ見ているとさ。
もよおしてこねえか?」
なにを?
「なにって・・ナニをさ。
昨日も見に来てたんだけどさ、久しぶりにさ、
高校生のガキに戻ったみたいにさ、こうグッとな。
昨日久しぶりにカカァ抱いちまってよ。」
ナニいってんだ!いい歳こいて。
「そうはいってもよ。
なんだろうな、この根っこはよ。
きっと子宝の神様かなんかじゃねえのか?
とか・・思ったりして。」
そんなことがあってから
役員の自主的な見回りが多くなり
私自身言われてもみれば、夫婦生活が新鮮なものとなった。
そんな折、神様の御姿を悪ガキに燃やされたらたまらないと
いうものがあり小さいながらも社を建てようという者が現われた。
そこで事件が起きた。
境内から根っこが無くなったのだ。
役員達は探し回ったが・・。
悪ガキ共がどこかに持っていったのではないか、ということになった
やがて次の月次祭がやってきた。
作品名:神社奇譚 1-2 古井戸 作家名:平岩隆