神社奇譚 1-2 古井戸
下世話な下品な笑いも引っ込むほどリアルすぎる代物なので
役員総出で神社まで運ぶことになった。
これがなんともリアルな女体ほどもある重量で骨が折れたが
宮司の指示で幣殿に運び入れて改めて祈祷を行う事になった。
一応は先日、井戸の御祓いをしたのではあるが
あまりにリアルな根っこは、そこに居合わせた誰の目にも
何かが取り憑いているような妖しい色香と雰囲気を漂わせていた。
宮司もその空気を察知したらしく、丁重に再度お祓いして
灰に戻っていただこうと考えたようだ。
ところが役員会の会長はどうだろ、残しておいたら・・と云いだした。
確かに灰に戻ればそれっきりじゃないか、と云う声もあった。
当の春彦さんは「ぃゃぁ、気持ち悪いからよぉ早く焼いちまえよ!」と
煽るのだが、どうも町の名士さんたちは、「これは水神様の御姿じゃないか」
と云いながら、お焚き上げを拒んだ。
こうなると宮司もひとつき様子を見ようか、と云いだす始末。
ただこの根っこがあまりに大きなものであったので拝殿には置けず
境内の隅っこに置かれた。
来月の月次祭で宮司が来られるときに決着しようぜ、と云いながら
その日は終わった。
作品名:神社奇譚 1-2 古井戸 作家名:平岩隆