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CROSS 第11話 『奇妙な夜間行軍』

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第3章 夜間行軍



 基地のヘーゲルとの通信が途切れ、通信ができなくなった後、山口と妖夢は言い合いになった。
「どうしても、あの塔まで行かなくちゃいけないんですか? 私は私で、白玉楼に救助を頼んでもいいですよね?」
妖夢はポケットから、スキルカードの形をした薄型通信機を取り出して見せた。
「……帝国連邦製の無線機でさえ使えないのに、幻想共和国製の無線機が使えるものか!」
バカにした口調でそう言う山口に構わず、妖夢はその薄型通信機を使ってみた。……しかし、雑音がするだけで使えなかった。彼女が悔しそうに薄型通信機をポケットにしまったとき、彼はどや顔だった……。
 山口は、遠くにそびえ立つ塔を指さして、
「あの塔には発着場が残っているはずなんだ。それに、武器もあるはずだ」
「この暗闇の中を歩くなんて無理ですよ!」
「……それじゃあ、この特殊ゴーグルを貸してやる。そのかわり、先導してくれ」
山口は特殊ゴーグルを外し、それを妖夢に渡した。妖夢は、あきらめた様子で特殊ゴーグルを装着した。装着した途端、妖夢の視界は明るくなった。
「……まぁ、これならいいでしょう」
妖夢は少し安心できたようだ。
 山口はイヤホンを両耳につけていた。つけた後、ポケットの中で何かを操作していた。
「……何をやっているんですか?」
妖夢が不審そうに山口に聞いた。妖夢の両目は、特殊ゴーグルで薄すらと覆われている。
「久しぶりに、音楽を聴きながら戦おうと思って」
「……やっぱり、帝国連邦の人間は変わってるわね」
「何か言ったか?」
山口が両耳からイヤホンを外してから言った。イヤホンから音が小さく漏れ聞こえてくる。
「……その、何ていう曲を聴いているのかと」
「ストーンズの『Sympathy for the devil』っていう曲。『悪魔を憐れむ歌』ってやつだよ」
「……本国で聴いたことがありますが、立場上、あなたが聞くのはマズい歌詞じゃないですか?」
「…………」
しばらくその場が、気まずさで凍った……。