小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

CROSS 第11話 『奇妙な夜間行軍』

INDEX|10ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

第4章 大義



 それから30分ほど歩くと、ラトリアの塔に着いた。塔は複数あり、どれも空高くそびえ立ち、気味悪い空気が塔全体を覆っていた。
「この中に入るんですか?」
妖夢はうんざりした様子だった。
「今、オレ達が通った腐れ谷よりかはマシだと思うよ」
山口が今来た道を指さした。あちこちに敵の死体が転がっていた。
「まぁ、オレが弾切れになったときは頼むよ」
「……わかりました」

 意外にも塔の中の敵は少なく、すぐに陣地がある頂上付近までたどり着いた。ただ、陣地の中はめちゃくちゃで、血が飛び散りまくっていた……。
 懐中電灯があったので、光が外に漏れないように注意しながら点けた。
「やっぱり明るいのはいいですね」
妖夢がほっとした様子でそう言った。
「幻想共和国に懐中電灯なんてあったのか? ろうそくぐらいしか無いと思っていたけど?」
山口が馬鹿にした口調でそう言った……。妖夢は無視した様子で、休むためのベッドを探していた。
 山口は窓際でバッジ型通信機を使えるか試してみた。すると、ヘーゲルたちがいる基地との通信ができた。ここが高い場所だからか、
通信の中継アンテナがこの塔に設置されてるのか、とにかく通信ができた。
「ヘーゲル!!! 聞こえるか!!!」
山口は大声で呼びかける。彼が突然大声を出したので、妖夢が少しだけビックリしていた。
『……山口ですか? ヘーゲルです』
ヘーゲルの声が聞こえた。少し眠そうだった。山口はチラリと腕時計を見た。午前1時を少し回ったところだ。大きな出来事が続いたため、山口はこんな時間であることを忘れていた。
「ああ、ヘーゲル。塔にいるから、すぐに救援に来てくれ。もうクタクタだ」
『お疲れさまです。すぐに救援のエアリアルを向かわせます』
「ありがとう」
『それと山口。大事なことです』
そこで山口はチラリと妖夢のほうを見た。妖夢はきれいなベッドを探すのはあきらめた様子で、代わりに寝袋を探していた。
「すぐ近くに庭師がいるから気をつけないとな」
『いえ、そこまで大事な話ではありませんよ』
「ならいいか」
『単刀直入に言いますが、今いるこの世界を明日の正午に、異次元間弾道ミサイルで攻撃するということです。山口さんが残っていようといまいと』
「…………」
山口は黙った。
『もちろん、我々の撤退の後にです。だから、急がないといけないんです』
そこで山口は我に返った。
「……そうだな。オレの私物はまとめて持っていってくれていいぞ。
 あっ、ちょっと待ってくれ」
そこで山口は妖夢のほうを向き、
「基地に私物を置いてるか?」
「置いてませんけど、どうしてそんなことを聞くんですか?」
「明日の昼過ぎには、この世界は火の海になっているからさ!」
「はい!?」
妖夢は唖然として持っていた寝袋を地面に落としたが、構わずに彼はヘーゲルとの通信に戻った……。