サイコシリアル【5】
6
僕が、目を覚ました真っ白な壁紙に覆われた見慣れぬ世界だった。最初は、あぁ天国って案外白いんだな、なんて真面目に感慨深げだったけれど、よくよく考えれば僕は致命傷を負ってないわけで。
単純に、病室だった。
ふと、右太腿に重量感を感じ、そこに視線を送ってみる。
僕の傍らには、パイプ椅子に座ったままベッドにもたれるように寝ている戯贈がいた。顔をこちらに向けて寝ていない為、寝顔を拝むことが出来ないのが非常に残念だ。
そうと分かると、何故かこの重量感すらも愛おしく感じてしまうものだから、摩訶不思議と言うやつだ。
僕は、なんとなく戯贈の頭を撫でたい衝動に襲われ体を起こそうとした。右手がギブスでがっちりと固定されている為、左手一本で体を起こし、戯贈の頭に手を伸ばす。
「体の具合はどう?」
起きていたのか。いや、それとも今起きたのかは分からないが、こうやってずっと看病してくれたのだろう。
「右手の痛覚神経が凄まじくらい刺激をうけているよ」
「そう」
戯贈は、ぶっきらぼうに答えた。
戯贈らしいと言えば、戯贈らしいな。
僕的には『心配したんだから』とか『心配なんてしてないんだからね』等のアニメディア的展開が望ましいのだけれど、これ以上の贅沢は言えない。
沈黙が辺りを包んだ。
話さなければならないこと、聞かなければならないことが沢山あるのだけど、どうしたものか。
「あの後━━」
数分と待たずとして、戯贈が話始めた。あの後というのは、僕が気を失ってからのことだろう。
戯贈曰く、
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし