サイコシリアル【5】
「ごふっ」
肺に溜まっていた空気を吐き出しながら壁に激突。
背中からもろに壁に激突し、頭部が慣性の法則に従って後を追うように壁に直撃した。
一瞬、意識が飛びそうになったが、なんとか堪え目の前を見据える。
するとそこには、ゆらゆらと体を左右に揺らしながら立っている九紫戌亥がいた。
どうやら僕の拳は彼に届いていたらしい。
「ははは・・・・・・してやったりだな、戌亥」
そういう僕の意識は遠のいていく。壁伝いにずるずると情けなく、倒れ込んでいくのが分かる。遠のいていく意識の中、戯贈と九紫がこちらに駆け寄ってくるのを捉えたが、僕には応えることが出来ない。それほどまでに、僕の体は限界らしい。後は、兄弟間、被害者の問題だ。傍観者が出しゃばるべきではない。僕が出来ることは、全部やったつもりだ。
多分、不可能なんてない。不可能を可能にした時点で、それは可能だったってことなんだから。
だから、この壊れかけた関係を修復するのも不可能ではないのかな。
僕は、最後の最後に良く分からない思考回路を展開し意識を失った。
作品名:サイコシリアル【5】 作家名:たし